一般的な企業で勤務したり両親や配偶者の扶養に入っていたりすれば、あまり社会保険制度を気にせずに済みます。しかし、比較的高収入を得やすい業種であるソープ嬢は扶養から外れやすい上に、福利厚生といった待遇の対象外となることが少なくありません。そのため、自分自身で社会保険へ加入するケースが一般的です。

この記事では、ソープ嬢が加入する社会保険の基本的な知識と、保険料を納めなかった場合のリスクについて解説します。これまで手続きを行ったことがなく、社会保険がどのようなものかよく分からない人も、ぜひ参考にしてください。

日本における社会保険制度とは、労働者の健康や生活を守るために必要な、最低限のセーフティラインを社会全体で保障する制度です。病気やケガ、失業などが原因で収入を得られなくなった場合に、条件を満たしていれば一定額の援助や支給を受けることができます。

一般社会・一般企業で社会保険と呼ばれるものは、下記5種類の保険です。

社会保険には、企業で加入する保険と個人で加入する保険があり、それぞれ加入条件が定められています。

ソープ嬢の多くは風俗店と業務委託契約を結んだ個人事業主にあたります。そのため、会社員やお店の従業員が対象となる雇用保険などには入れません。ソープ嬢が加入する社会保険は、「国民健康保険」「年金保険（国民年金）」「介護保険（40歳以上）」のみとなり、いずれも確定申告の控除対象として申請可能です。

上記保険への加入は、日本国民の義務となります。未加入・未納状態となるとさまざまなリスクが発生するため、速やかに手続きを行いましょう。

ここでは、ソープ嬢が加入する3種類の社会保険を紹介します。

国民健康保険は、住んでいる地域の地方自治体が運営する保険制度です。他の健康保険に加入していない場合は、必ず加入する必要があります。

病気やケガをしたとき、保険証がなければ診察・治療・薬などの代金は全額自己負担で支払わなければなりません。しかし国民健康保険に加入すると、医療費の自己負担割合は3割で済みます。不規則な生活により体調を崩しやすいソープ嬢にとって、安心して医療機関を受診できる非常にありがたい制度です。

加入手続きは、市区町村の役所窓口で行えます。手続きの詳細や必要なものが知りたい場合は、最寄りの役所へ問い合わせるとよいでしょう。

年金保険は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人に加入義務がある保険制度であり、個人事業主に当たるソープ嬢は国民年金へ加入します。加入期間中、所定の金額を毎月支払うことで、下記3種類の年金が受給可能です。

基本的に、20歳になった時点で日本年金機構からお知らせが届きます。退職などで厚生年金保険の対象から外れる場合は、最寄りの役所で手続きが必要です。

収入に余裕がある場合、付加年金か国民年金基金を追加で支払えば、受給する年金額を増やすこともできます。

介護保険は、40歳以上の日本国民全員に、原則として加入が義務付けられている保険制度です。介護保険料を支払っていれば、将来介護や支援を受ける際、介護サービス利用料の自己負担額が1〜3割に減額されます。

65歳未満であれば、40歳を迎えた段階で、自動的に加入している健康保険へ介護保険料が上乗せされます。個人事業主に当たるソープ嬢の場合、国民健康保険の保険料と一括で請求されるため、特別な手続きは必要ありません。

ソープ嬢が支払う社会保険料は、企業の社員とは異なり全額自己負担であるため、「将来の保証よりも今のお金が大事だから支払いたくない」と考える人もいるでしょう。しかし、社会保険への加入および保険料の支払いは日本国民の義務であり、拒否することはできません。

保険料未納のまま放置した場合、督促状や催告状が送付されるだけでなく、さまざまなリスクが生じます。納付書などは郵便受けに配達されるため、郵便物の確認を怠らないことが大切です。

ここでは、社会保険料を納めなかった場合のリスクを解説します。

国民健康保険料を支払わなかった場合は督促状が発行され、滞納期間に応じて保険料額に対し最大年14.6％の延滞金が加算されます。ただし、保険料2,000円もしくは延滞金1,000円に達しない場合に限り、延滞金は発生しません。また、督促状が発行されると、延滞金に加えて1期当たり100円の督促手数料が必要です。

「昼間は寝ていて支払いに行けない」「時間的にお金をおろせない」などの場合は、口座振替・クレジットカード・スマホアプリで支払う方法も検討しましょう。

督促状の送付後も滞納すると「短期被保険者証」に切り替えられ、期限ごとに保険証の更新が必要となります。さらに未納期間が1年以上経過すると「被保険者資格証明書」に変更されます。資格証明書の場合、受診時は医療費を全額を支払わねばならず、払い戻しを受けるには後日窓口での手続きが必要です。

さらに滞納を続けて1年6か月が経過すると、高額療養費などの保険給付金が支給されなくなり、全額自己負担となります。ソープ嬢は、疲労や婦人系の病気などで病院にかかる機会が少なくありません。医療費が7割減額される国民健康保険料は、忘れず払いましょう。

将来受け取れる年金額は国民年金保険料の納付月数で決まり、未納期間があるとその月数に応じて減額されます。年金保険には時効があり、納付期限から2年経過すると未納期間として確定し、納付期間が10年未満の場合は年金自体が受給できません。

通常の年金の受給資格がない場合、厚生年金の受給も不可能です。将来、厚生年金保険に加入できる一般企業に勤めた場合でも、「保険料だけ天引きされて年金がもらえない」事態に陥る恐れがあります。

障害年金を受給するためには、「初診日」「障害等級」「保険料の納付要件」の3つの要件すべてをクリアしなければなりません。保険料の未納期間が長期にわたると、下記の「保険料の納付要件」を満たせない可能性があります。

医療機関受診後の後払いも無効となるため、注意しましょう。

社会保険に共通するのが、「保険料の支払いは義務であり、未納や滞納が続くとペナルティが科せられる」という点です。さらに、督促や催告が行われてからも保険料を滞納したままにすると、財産調査や強制捜査が行われ、場合によっては財産を差し押さえられるリスクがあります。

しかし、災害や失業など特別な事情があれば、一時的に猶予がもらえるケースもあります。各役所では、保険料の納付が困難な人に対応する窓口を設けているため、支払えそうにない場合は早めに相談しましょう。

国民健康保険の保険料は、前年の1〜12月の所得に応じて金額が決まります。企業経由で所得額の申告を行ってもらえないソープ嬢は、所定の期間に確定申告を行って所得額を申告しなければなりません。確定申告は、保険料の他にも住民税などの金額を算出するために必要であり、一定の所得がある人の義務となります。

確定申告を怠ると延滞税や無申告加算税などのペナルティが科せられるため、必ず行いましょう。なお、国民年金の保険料は全国一律です。

社会保険への加入や保険料の納付は日本国民の義務であり、ソープ嬢も例外ではありません。しっかりと納めていれば、病気やケガの際にかかる医療費が減額される、将来国から年金を受給できるといった恩恵を受けることが可能です。

ただし、社会保険料の納付を怠ると延滞金が加算されたり、医療費の負担額が増えたりする他、年金の受給額が減額されます。結果として出費が増える事態を招くため、きちんと確定申告を行った上で払うべき保険料を納付しましょう。